空き瓶の研究日誌

生物系大学院生の備忘録

論文備忘録)ヤモリの吸着構造

リファレンス

Attachment Beyond the Adhesive System: The Contribution of Claws to Gecko Clinging and Locomotion

Naylor, E. R., & Higham, T. E. (2019). Integrative and comparative biology, 59(1), 168-181.

 

要旨

ヤモリの足に見られる吸着のための構造の論文

ヤモリの足の裏には吸着のためのpad(趾下薄板というらしい)があり,このパッドに生える剛毛によって生じたファンデルワールス力を利用して吸着しているということは研究が進んでいる.一方ヤモリの足先にはこのパッドとは別にツメもあるのだが,この機能については今まで研究がほとんどなされていなかった.この論文ではヤモリのツメに注目し,ツメの有無が壁にしがみつく能力にどの程度影響を与えるのかを調べている.結果としては,表面の粗い基質や急峻な斜面において顕著に吸着力が低下したことから,そのような基質の上を移動する場面で役立っていることが推察される.

 

コメント

一言:ツメと吸盤の進化の道筋が気になるところ

 バイオミメティクスでも注目を浴びたヤモリの足の話.吸着のためにファンデルワールス力を利用していることは聞いたことがあったが,ツメも利用していることは知らなかった.昆虫でもツメだけでなく吸着のための肉盤を持っているし,頭足類でも吸盤に限らずツメを持つやつもいるし,吸盤とツメの進化はいろいろな動物群で独立して起こってきた模様.ヤモリではツメとパッドは相同ではないようだが,吸着力を求めるとどの動物でもツメと吸盤の両方が結果として獲得されるのだとしたらかなり興味深い.ヒルなどでも実はツメ様の構造があったりするのだろうか.