空き瓶の研究日誌

生物系大学院生の備忘録

論文備忘録) 棘皮動物の管足は吸い付かない

 

リファレンス

Echinoderms don’t suck: evidence against the involvement of suction in tube foot attachment

http://dx.doi.org/10.11646/zoosymposia.7.1.3

Hennebert, E., Santos, R., & Flammang, P. (2012). Echinoderms don’t suck: evidence against the involvement of suction in tube foot attachment. Zoosymposia, 7(1), 25-32.

要旨(和訳)

棘皮動物が管足を使ってものにくっつく仕組みについて考察した論文

 ウニやヒトデは管足と呼ばれる足を用いてものに引っ付いたり移動したりしている.この管足の機能は吸盤のように吸い付くことで行われていると広く考えられてきた.しかし,粘着質の物質の分泌がこの機能に大きくかかわるのではないかということが先行研究から示唆されており,本研究では形態学的、および物理学的なアプローチから管足の機能の仕組みについて詳細に調べた.平面に吸着した状態のまますぐに固定した個体における管足の形態を観察したところ、管足の先端は真っ平になっており,吸盤のように引圧を作り吸着するための空間は見られなかった.またはがすために必要な力は引っ張る方向を変えても変化しなかった (通常の吸盤なら垂直方向以外に引くとはがすために必要な力は減少).以上より,棘皮動物の管足は吸着力によるものではなく粘着物質の分泌によるものだということが示された.

 

コメント

棘皮動物の管足は、名前に管とついていることからも引圧を作る構造によりイカやタコの吸盤と同じようにくっついているものだと思い込んでいたので,そのような働きはないという知見はとても意外だった.巻貝なども粘着質の物質により接着・脱着を行うと言われているので,むしろそちらに近いのかもしれない.管足は棘皮動物に特有で,移動のためにも欠かせない形質なので,その発生や進化の過程も興味深い.