今回は実験方法に関してのメモ。
最近ラボの後輩でパラフィン切片の作製に苦戦している人が多い.色々と自分のできる範囲で教えてあげてはいるんやけど,忘れていることもあったのでまとめ直してみることにする.
そもそも今のラボは少し特殊で,扱っている生物が学生ごとに動物門レベルでバラバラなので,各人の実験材料に適したプロトコルを自分で見つけなければならない.それがなかなか見つけられずに困っている人が多いという状況.
1,一般的な作製手順
2,各段階でのトラブルシューティング
という流れでまとめておきたい。
今回は 1,一般的な作製手順についてまとめる.
一般的なパラフィン切片の作製手順
1,サンプルの固定
- 10%ホルマリンやブアン (Bouin's solution) などの固定液を用いてサンプルの組織片などを固定する
2,脱水~パラフィンへの包埋
- 固定したサンプルをアルコール系列で脱水 …水分が少しでもあるとパラフィンが染み込まないので,組織にパラフィンを浸透させるためまず水分を完全に無くす
(例: 70%EtOH→90%EtOH→95%EtOH→95%EtOH→100%EtOH→100%EtOH, 各30分) - 透徹…パラフィンに漬ける前に,アルコールとパラフィンの両方と良く混ざる物質に浸すことでアルコールを追い出し,パラフィンが染み込みやすくする
(例: キシレン, 15分→キシレン,30分) - 包埋…恒温器の中でパラフィンを浸透させる.恒温器はパラフィンの融点より2, 3℃高い温度に設定する.
(例: パラフィン:キシレン=1:1の混合液→パラフィン→パラフィン→パラフィン,各60分)
3,薄切・伸展
- パラフィンに包埋したサンプルをトリミング
- 台木にパラフィンでサンプルを貼り付ける
- ミクロトームにより薄切
- 伸展器を37℃前後にセット,その上にスライドグラスを置き,DWを垂らす
※表面にコートのないスライドグラスの場合,卵白グリセリンを薄く塗っておくと伸展しやすくなる - 薄切してできてきたリボン状の切片を短く分け,スライドグラス上に並べ伸展させる
4,染色
- ヘマトキシリン・エオシン,トルイジンブルーなど,見たいものに応じて染色
- 脱パラフィン系列→染色系列→脱水系列 を順番に通していく (パラフィン切片の場合まずパラフィンを溶かし去っておく必要がある)
- 脱パラフィン系列
(例) キシレン→キシレン→100%エタノール→100%エタノール→90%エタノール→70%エタノール→水道水(エタノールを洗い流す)→蒸留水 - 染色系列
(例) マイヤーヘマトキシリン→水道水で洗浄 (マイヤーヘマトキシリンの場合15分程度で良い)→1%エオシン→水道水で数秒洗浄 (余分な色素を除く) - 脱水系列
(例) 70%エタノール→90%エタノール→100%エタノール→100%エタノール→キシレン→キシレン - カナダバルサム,マリノールなどを用いて封入
5,観察
とりあえずこのような流れで行う.
まだ大雑把なので,少しづつ加筆,修整して行くつもり.
※自分の所属するラボのプロトコル,および「顕微鏡標本の作り方」(田中克己・浜清) を参考にして記事を作成.「顕微鏡標本の作り方」はかなり古い本だが,基本的なことからとても詳しく書かれており,非常に勉強になる素晴らしい書籍.図書館などで是非探してみて欲しい.