空き瓶の研究日誌

生物系大学院生の備忘録

論文備忘録)RTKからERK/MAPKへのシグナルの統合

リファレンス

Integrating signals from RTKs to ERK/MAPK. 

McKay, M. M., & Morrison, D. K. (2007). Oncogene, 26(22), 3113-3121.

https://www.nature.com/articles/1210394

 

要旨(和訳)

RTKという物質を介した細胞のシグナル伝達の話

生体において適切な反応を起こすためには,細胞表面で受容されたシグナルは細胞内のターゲットに適切に伝達されなければならない.このシグナル伝達プロセスにおいてreceptor tyrosine kinases (RTKs)は良く用いられており,多くの細胞外の刺激の入り口として機能し,細胞間のシグナル伝達経路において重要な役割を果たしている.RTKを介したシグナル伝達に欠かせないのが mitogen-activated protein kinase (MAPK) cascade という経路であり,これはRaf, MEK, extracellular signal-regulated kinase (ERK) kinasesから成り立っている.長年に亘りRTKsからERKへのシグナル伝達は細胞膜でのみ起こり,Rasに仲介されたシンプルな経路だと考えられてきた.しかしながら,RasとERKが様々な細胞間の要素により活性化され得り,RTKが他の酵素などを導入することによってRas/ERKシグナルが改変されうることが発見され,このモデルだけでは説明できないことが明らかになりつつあった.さらにERKの反応の土台となりシグナルを調整するタンパク質も見つかり,RTKを介したERKシグナルの強さ,長さ,場所の決定に大きな役割を果たしていることがわかった.またこれらはRTKシグナルにより引き起こされる生体反応の多様性にも寄与している.

 

コメント

一言:複雑だからこそ反応の多様性が生まれる

今回の論文は面白いものを選んだというというよりお勉強のためのチョイス.アルファベットが並んでわかりづらく,忍びない.もともとは直線的でシンプルな経路だと考えられていたようだが,論文中の図にあるように様々な分子によって細かく制御されているようである.RTKは突起の形成なんかにも関わるとされているので,腕や角など様々な器官の形成に関わるかもしれず,非常に重要な経路なのだろう.