空き瓶の研究日誌

生物系大学院生の備忘録

論文備忘録)エダアシクラゲにおける細胞増殖による形態・再生制御

リファレンス

Cell proliferation controls body size growth, tentacle morphogenesis, and regeneration in hydrozoan jellyfish Cladonema pacificum.

Fujita, S., Kuranaga, E., & Nakajima, Y. I. (2019).  PeerJ, 7, e7579.

https://peerj.com/articles/7579/ 

 

 要旨

刺胞動物門ヒドロ虫綱のクラゲはプラヌラ幼生,無性生殖的に増えるポリプ,有性生殖をするクラゲ (medusa) など複数のライフステージを持つ.自由遊泳性のmedusaは複雑な形態を持ち体サイズの増加と再生能力を示すが,根底にある細胞メカニズムについては理解が進んでいなかった.この研究では体サイズの増加,触手の形成,体の再生における細胞増殖の役割を,エダアシクラゲ Cladonema pacificum を用いて調べた.S期の細胞と分裂期の細胞の分布を調べたところmedusaにおいては部位ごとに細胞増殖の様子が区別できた.傘の部分では均一に増殖が見られた一方,触手では付け根のtentacle bulbに固まって細胞が増殖している様子が見られた.均一な細胞増殖が体サイズの増加に関わるのではないかと考えられたためhydroxyureaにより細胞増殖を阻害した結果,実際に体サイズは減少し触手の分岐や刺胞細胞の分化,再生に欠陥を引き起こした.また,ヒドロ虫綱の他の2種との比較の結果tentacle bulbにおける局所的な細胞増殖が童謡に見られこのような形成過程はヒドロ虫綱に置いて共通だと考えられる.以上より細胞増殖がクラゲにおける体サイズの増加や触手の形態形成,再生において重要な役割を果たしていることが確かめられた.

 

コメント

一言:触手の形成過程

触手というものの形態形成に興味があってなんとなく調べてみていたところ見つけた論文.細胞増殖が触手の基部に当たるtenntacle bulbにかぎられそこから伸び続けるといったことは,脊椎動物などで一般に付属肢は先端に増殖領域があるのとは対照的で面白い.位置情報や細胞増殖に関わる遺伝子の発現も気になる.刺胞動物の触手は刺胞細胞を持つという特徴もあるが,その配列のパターンなども調べてみると面白そうやなぁ.